着物で歌舞伎を楽しもう!第三回では歌舞伎が行われる劇場について書かせていただきました。御園座のこけら落とし公演や御園座の様子についても書いているので、こちらの記事も合わせて読んでみてください。
着物で歌舞伎をたのしもう!【歌舞伎ってどこでやっているの?】大人の女性のための着物着こなし術(番外編)
まだリニューアルオープンされた御園座に行かれてない方、ぜひとも一度観劇に出かけてみて下さいね。そして第四回目である本記事では、歌舞伎にふさわしい装いをテーマに綴らせていただきます。
歌舞伎にふさわしい装いとは
今回は歌舞伎に何を着ていったらよいのか、ということを少し掘り下げてみたいと思います。もちろんどんな服装で行っても問題はないのですが、せっかく非日常を味わうのですから、服装から少しでも気分を盛り上げたいものです。そして、お察しの通り、歌舞伎にふさわしい装いといえば着物。では、どんなお着物であればふさわしいのかをみていきたいと思います。
着物が歌舞伎にふさわしい理由
先日の御園座のこけら落としでもかなり多くの方が着物で観劇してみえました。
着物で観劇することの魅力は、劇場や歌舞伎と一体感が生まれることです。“舞台は水物”とはよく言ったもので、ただ単に観劇するという受け身な姿勢でいるより、役者や劇場との一体感を感じながら、舞台を味わうという感覚を感じることができれば、より深く歌舞伎を楽しむことができます。
例えば、おいしいコーヒーを味わうときに、コーヒーを入れるカップやコーヒーを飲むときにかける音楽をこだわるとよりおいしく感じることができますよね。同じように、歌舞伎を楽しむためには、日常の服装ではなく、着物で行くことで感性も研ぎ澄まされ、より味わうことができます。
また、これは歌舞伎というより歌舞伎という場所で着ることの良さなのですが、どことなく見られている感覚もありますので、背筋がピンとする感覚がありますし、お着物を着られている上級者もたくさんいるので、コーディネイトの勉強になります。着物を普段あまり着られない方にとっても、お着物の方がたくさんいるので、着物を着ることのプレッシャーが少なくお着物を着ることができると思います。
それでは実際どのような着物を着ていったらよいのでしょうか?
歌舞伎に着ていってはいけない服装
歌舞伎では、”これを着ているから観劇にふさわしくない”という服装というものは、実はありません。そもそも歌舞伎の観劇にドレスコードがあるわけではないので『何でもいい』としか言いようがないのですが、かといって一番着物で格の高い黒留袖や未婚女性の第一礼装である振袖で行ったとしたら、周りの方は凄く違和感を感じてしまいます。一番カジュアルである木綿の着物は歌舞伎の観劇にはよいのか、というお話がよく話題にも上がりますが、こちらもOKではあるのですが、できるだけカラフルなものは避けるようにしてください。
上記の通り、ドレスコードはないのですが、重要なことは歌舞伎の劇場に来て一番の主役は誰であるかということを考えることだと思います。劇場に来てみえる方のほとんどは舞台の上で演じる役者さんを見にきています。呉服屋の店主の目線で言うのであれば、役者さんよりも目立ってしまう装いよりも、役者さんを引き立て、一体感を生むような落ち着きのある装いの方がふさわしいと考えています。木綿の着物であれば、できるだけカラフルなものは避け、落ち着きのある装いにするのがおすすめです。
歌舞伎を着物で楽しむということ
和の文化の基本になっている精神は、他人への配慮をするということ。年に数回の歌舞伎の観劇なので、自身にとってはおもいっきりおしゃれして行きたいものですが、冒頭で書きました通り、劇場との一体感を感じられるというコーディネイトが歌舞伎にふさわしいと思いますので、目立ちすぎず周りから見て違和感がない範囲で思いっきりおしゃれをしていくというのが、かわちやからのアドバイスです。
歌舞伎の観劇にふさわしい着物
控えめな柄行の訪問着、付け下げ、小紋、お召、紬
歌舞伎の観劇にふさわしくない着物
留袖、色留袖、振袖、まわりから目立ってしまうような派手なコーディネイトの着物
コーディネイトを楽しむワンポイント
歌舞伎を観劇する際のコーディネイトをより楽しむために、“ちなみ柄”などを取り入れるとよりコーディネイト力が増します。これは、他人から見てどうというわけではなく、自分だけのひそかな楽しみ方なので、自分なりの“ちなみ”方を取り入れてみて下さい。
具体的に言いますと、海老蔵さんの公演の時には海老の柄が入った帯や着物を使ってみるとか、歌舞伎の隈取のはいった鼻緒を使うとか、もっとさりげなくいくならば、羽織の羽裏に歌舞伎にちなんだ柄を使ってみるなど。自分次第でちなみ方は様々です。先日の御園座のこけら落としの際には御園座のイメージカラーである御園座レッドにちなんで御園座レッドの帯締めをかわちやの若女将は締めていきました。
このように、コーディネイトする際に自分なりのテーマを考えてみるのも歌舞伎コーディネイトの楽しみ方の一つと言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか?歌舞伎に着ていく服装にこだわることは、実は歌舞伎を楽しむための一つの手段です。そして歌舞伎を活用することでより着物の着方、コーディネイトについて興味を持ってもらえたらうれしい限りです。
歌舞伎の観劇にふさわしい着物
控えめな柄行の訪問着、付け下げ、小紋、お召、紬
第五回はさらに具体的に歌舞伎に着ていけそうな着物の探し方についてになります。ご期待ください。本日はこれまで。