羽田空港から約50分。伊豆諸島の島である八丈島は、東京都に属しているとはいえ、溶岩の噴火によって出来上がった独特の風土を有してた島です。
古くは縄文時代にも人が住んでいた形跡があり、また流人によって積まれたといわれる丸石の石垣がいたるところで見ることができ、この石垣が八丈島の独特の風景ともいえます。
勝手な想像で沖縄のようなからりとした日差しを想像していたのですが、島の方に聞くところによると湿度が多く、あまり気温も上がらないというお話でした。1日中すっきりと晴れることも珍しいらしく。2日間の滞在中、晴れ間が見えたかと思えば急に雲に覆われたりと目まぐるしく変わる天候も印象的でした。
今回訪れたのは、本場黄八丈の織元である黄八丈めゆ工房。歴史あるこの工房は山下芙美子さん、誉さん夫妻が切り盛りされています。沖縄などに伝わる多くの織物と同じように、黄八丈も古くは室町時代に貢物として納めたのが始まりとされています。工房にて見せていただいた永艦帳には年貢として毎年納められた布の見本が記されています。八丈島という島の名前も黄八丈を産する島というのが由来になったといわれるほど、島にとって重要な織物であったことがうかがえます。
黄八丈の最大の特徴は、カリヤス(黄)、タブノキ(茶)、シイ(黒)の草木で染めた三色しか使われていないこと。また、かすりをつくらないことが独自の織物として現在も存在するゆえんだと山下芙美子さんがおっしゃられていたことが印象的でした。
ここで、(カリヤス)の黄色を鮮やかに出すための媒染としての灰汁をつくるために大量の椿と榊の生葉を白くなるまでもやします。
黄八丈めゆ工房では黒色を出すために鉄分の多い、天然の泥田に入れ黒の色を発色させます。
工房に入ると力強く『トン、トン』と2回づつ打ち込まれる機織りのリズム。黄八丈のピンと張りのある目の詰まった風合いの最大理由でもあります。
また、通常は湯通しなどは専門業者に出すことが多いようですが、山下さんの『黄八丈めゆ工房』では湯通しを工房内で行います。お風呂のお湯ぐらいの温度のお湯の中につけ、糊気をふやかしたあと
斜めに渡された板の上で水をながしながらたわしで軽く表面の糊をとっていきます。伸子を張る奥様の芙美子さん。湯通しがおわり、天日に干されていきます。島の天気はかわりやすいため、天候にも常に気を使わなければいけません。
穏やかなたたずまいのご主人の誉さん。八丈島の歴史や織物の話などたくさんしてもらいました。織物の話をすると次から次へといろいろな話が飛び出してくる引き出しの多さにはびっくり。黄八丈という織物の魅力を再認識した2日間でした。