山形県といえばもっとも初めに思いつく特産物の一つにサクランボがあります。山形を訪れた6月の終わりはまさにサクランボの最盛期。果樹園のサクランボの木には完熟のサクランボがたくさん実っており、木から直接とって食べる完熟のサクランボは格別の味でした。
さて今回山形県の『渡豊工房』さんでサクランボの実で染める『サクランボの実染め』の体験&研修でこの地を訪れました。
果実の小枝等で染める染色は、たまに聞くことがあるのですが、実で染めるというのは知る限りあまり聞いたことがありません。渡敬工房さんのサクランボ染めに使うサクランボは、上の写真のような色鮮やかな赤が特徴の『佐藤錦』『紅秀峰』といった品種ではなく、アメリカンチェリー系の『サミット』『紅さやか』『ジャボレー』『フジヤマ』の4種類がこちらの農園から染め物用として納められるそうです。
色の濃いサクランボの方が色がしっかり出るので染料として向いています。
いろいろと教えていただいた農園の方。
今回4反分の横糸を染めるために用意されたサクランボは6箱。結構たくさん必要なんです。
すべてのサクランボを種とはずしつぶしていきます
今回の研修&糸染めには全国から5件の呉服屋さんが集まりみんな総出でサクランボをつぶしました。
つぶした染料を煮出して
しぼると、いよいよ染料が完成。ここもででもとても大変な作業。
これから糸を染めていきますが、やはりここからは素人には難しい作業。ゆっくりやっているとムラになってしまうので、渡豊工房の息子さんのプロの技を拝見しました。
抽出した染料に酢酸を加えることによって鮮やかな色を保つのと、媒染の効果があるそうです。染料の温度が上がるにつれて酢酸が鼻をついてむせてしまいます。
この糸は前日に染められた経糸だそうです。こうして糸が完成してもすぐには織らずに、1年ぐらい寝かせて色を落ち着かせます。
かわちやにはこちらの工房で作られた着物が2反あります。1反目はサクランボ染のお召し生地に有松で竜巻絞りを施し、インド藍で染めたもの。
もう1反はサクランボの実のほか、ラフランスの小枝、リンゴの小枝、黄はだ、紅花等の草木を使っています。個々の反物についてはまた後日触れていこうと思います。
最後に、今回の研修をしていただいた『渡豊工房』のご家族。笑顔を絶やさない奥さん、気さくにいろいろお話してくださるご主人、そしてまじめで一途な息子さん、素敵な体験をありがとうございました。