ダマスク織というあまり聞きなれない名前の織物。
日本でいうと緞子(どんす)という名前になり、その語源はシリアのダマスカスといわれ、厚手の光沢のあるどっしりとした生地風が特徴です。
この織物の作者は北畠雪子さん。実際にお会いした北畠さんは、飾らない自然体でいい意味で力の抜けた方。不勉強な私にも、織り方を図を描いて丁寧に教えて下さいました。
以前読んだ写真集の解説にも『ずっと座っていて、くたびれたらお茶碗を洗って、掃除して・・・・・。40年やっています。無理がないから、嫌になりません』と語られているように、北畠さんにとっては織るということは特別なことではなく、日常の一コマなんだろうということも、北畠さんのお話から、感じることができます。
そうそう、この織物の名前『ジャーマンアイリス』は、私自身にとってはあまりなじみのない花ですが、北畠さんにとってはご自宅の庭に咲いていた生活空間の花。
だからこそ、精緻な究極の織にもかかわらず、どこか揺らぎを感じるおおらかさを併せ持っています。
「茶色の花ってめずらしいでしょ。だからこの花をモチーフにして織ってみたの」と語られる姿が印象的でした。